哺乳動物は哺母乳動物であると言われています。それは、それぞれの母乳にはその子(仔)が成長するのに必要な栄養が準備されているからです。例えば、生まれたらすぐに歩行しなければならない四足動物では、蛋白質(牛乳では3倍多い)やカルシウムが比較的多く、反対に生まれてから脳が発達するヒトでは糖質(乳糖、牛乳より1.5倍多い)や脂質(生物学的に適切な脂肪で、効率よく吸収される)が多く含まれています。
ミネラル、例えば鉄分。母乳中には牛乳より少し多いだけなため、人工乳を飲む子と同じように貧血になりやすいと考えられていましたが、母乳中の鉄分は50%吸収されますが、人工乳に鉄分を添加しても4%しか吸収されません。母乳は人工乳に比べ、消化、吸収がよいのは、発達中の乳児の臓器に相応しく作られているからです。
牛乳にはカゼイン蛋白質が多く、凝乳(硬いカード)を形成し、消化しにくく、母乳はソフトカードで吸収性がよい。一回の授乳において、前乳(貯まったお乳、糖分、水分が多い)と後乳(大きく濃い脂肪球と蛋白質が多い)と組成が異なります(一種の食欲のコントロールとも言われています)。
一方母乳の組成は母親の栄養状態に、脂質は少し影響は受けますが、蛋白質、糖質は殆ど正常範囲を保っています。
消化管ホルモンのコレシストキニンは、子どもの小腸の成長を刺激し、授乳ごとのカロリー吸収量を増加させます。未熟児を産んだ母親の乳汁は、その未熟児に適合した成分を持っていることが分かっています。
母乳は血清ビリルビン値の上昇を抑えることで黄疸の発症を少なくし、また将来の糖尿病発症をも防ぐと言われています。母乳で育てるということは、赤ちゃんに「最高の食べ物」を与えるということです。普通は「最高」のものというのは、なかなか手が届かない場合が多いものです。でも母乳は、あなたが今すぐに自分の手で赤ちゃんに与えることができる「最高の贈り物」です。